脱力スイングが飛距離を生む
かつて賞金女王に輝いた森田理香子プロのドライバースイングを覚えているでしょうか。
実にスムーズかつダイナミックなスイングで250ヤード以上の飛距離を誇っていました。
それだけ飛ばすので、かなり力感のあるスイングなのかと想像するかもしれませんが、思いのほか力みを感じません。
バックスイングでも力感がなく、一定のリズムで、むしろ軽く振っているようにさえ見えます。
力を抜いてスイングする
これがスイングの極意、飛びの秘訣を端的に表していると言えます。
つまり、スイング中のどのタイミングでも力まず、特に切り返し以降で脱力し、へッドの動きを邪魔しないように振ることが最もスピードを上げるカギであり、森田理香子プロはそこを意識しているように思います。
これは師匠である岡本綾子プロから伝授された技だと言えるでしょう。
静かな構えから、自然と動き出し、スムーズにトップまで行き、そこから力感なくダウンスイングに入り、そのままキレイに振り抜く。
どこにも無理がなく、とにかく楽に振っているように見えることこそ、スイングの極意と言えるのです。
アマチュアは切り返しで力む
その点、男性の一般アマチュアはせっかくの筋力を上手く使えているとは言えないでしょう。
というよりも、筋力がスイングを邪魔しているようにも見えます。
まさしく「カ感たっぷり」に振っていますが、実はその「力感」が筋肉を硬直させ、スムーズなヘッドの動きを阻害しているのです。
つまり、脱力の仕方、言い換えれば「力の入れどころ」がわかっていない。
特に上半身の脱力ができていないのです。
それも、切り返しのタイミングで力んでしまっている印象があります。
スイング計測で脱力を可視化する
それを証明するために、スイングを計測してみてください。
まずは軽く5球くらい打ってみましょう。
意識的に軽く打ってますから、ヘッドスピードは低くなるかもしれません。
「あれ?40メートル毎秒?いつもはもっといい数値なんだけどなぁ・・・」と思うでしょう。
そしてムキになり、今度はマン振りをする。
しかし、数字は上がってはいない。
そこで気付くのです。
「力いっぱい振っても、ヘッドスピードは上がらない」と。
実は「力感」が筋肉を固くし、スイングにブレーキをかけてしまっているのです。
つまり、飛距離アップとマン振りは無関係なのです。
フィニッシュの形をチェックしてみれば、一目瞭然です。
力んだスイングでは、フィニッシュで静止できていない場合が多いのです。

力感なく飛ばせるスイング
力を入れてもヘッドスピードをアップできないのならば、別の方法を試してみましょう。
自分のフルパワーを10としたときに、9の力、8の力、と少しずう出す力を抑えるイメージで球を打ってみてください。
そして、測定値を確認してほしいのです。
イメージは、素振りのつもりで。
スムーズに大きく腰と肩を回したトップからフィニッシュまで、インパクトを考えず振り抜き、きれいにバランスよく立っていられるフィニッシュを心がけるのです。
特に、切り返しで力を抜き、クラブが自然落下するような感覚で振るのが大切です。
当然、左右のグリップは柔らかい脱力が必須で、決して力みません。
その結果、力を入れていないときのほうが、ヘッドスピードは上がっていると理解できるでしょう。
力まなくなれば、ミート率が上がり、インパクト効率も向上するので、結果的に飛距離も伸びる可能性が高いのです。
その力加減や力感こそが、遠くまで飛ばせるスイングの真髄なのです。

切り返しで脱力する
ドライバーを構成するパーツの中ではヘッドが最も重くできています。
そして、すべてのクラブの中で最も長く、軽いので、ヘッドの挙動を感じやすい特性がありますが、スイング中にこのヘッド重さと挙動を感じられなければ力んでいる証拠。
つまり、脱力できていない証左なのです。
特にテークバックで地面と腕が平行になるところでヘッドの重さが感じられないようであれば、それは力んでいる状態にあると言ってもいいでしょう。
スイング中、ヘッドがどこにあるかを把握できていれば、力みがなく、最適なスイングができていると言えます。
とりわけ、トップからの切り返しで力んでいなければ、ヘッドが自然落下する感覚がわかるはずです。
逆にスイング途中で重さが消えてしまうようであれば、そこで力が入り、感覚を無くしてしまっています。
また、プロや上級者は、スイング中にフェースの向きを察知して、インパクトで調整できます。
テレビ中継などを見ていると、途中で右手は離すシーンがありますが、あれはフェースの向きの違和感を感じ、咄嗟に調整する高度なテクニックなのです。
無駄な力が入り、ヘッドの重さやフェース向きが感じ取れない状態だと、スイング中の微調整ができなくなり、OBを連発します。
クラブヘッドの重さを感じるスイングをして、感覚を磨いていくことが上達への近道でもあるのです。




脱力練習ドリル
コースに出て、ティーアップすれば、誰でも力んでしまうものです。
意のままに脱力できるものではありません。
リラックスしようと思っても簡単に力みはとれません。
ただ、意識付け次第で、意図的に力みがとれるようになります。
無駄な力みをとれば、ベストショットが打てるはずです。
アドレスで思い切り力む
人間は、体に力を入れ続けられません。
筋肉の収縮には限界がくるのです。
これを逆手にとれば、力みをコントロールできます。
つまり、アドレスに入ったら、まず思いっきり力んでしまえばいいのです。
グリップをできる限り強く握ってみる。
そして、特に腕を中心とした上半身の筋肉に力を入れてみてください。
この状態を数秒維持した後、一気に脱力すれば、それがベストな力の入れ具合なのです。
直前の力みと比較して、不思議なくらい力を入れずにスイングできると気づくはずです。
下半身を力むと上半身の力が抜ける
人間は複数の部位に同時に力を入れられないので、力を入れたくない部位があるなら、別のところに力を入れればいいのです。
スイングで力みたくない部分は「上半身」です。
特に肩周りの大きな筋肉はリラックスさせたいですし、グリップはその中に小鳥がいるくらい優しく握っておきたいものです。
逆に力んでもいいのは体幹や下半身です。
よく「バックスイングでは腹筋と背筋を使う」と言いますが、これは体幹に意識を向け、腹圧を入れ、腕の力を抜くとの意味でもあります。
そして、下半身の中では特に足の裏が重要になります。
足の5本の指でギュッと地面をつかむことを意識すると、上半身の力みを取るだけでなく、土台が安定したスイングにもつながります。
脱力素振りで意識をフィニッシュに向ける
力んだスイングをしていると、間違いなくフィニッシュが取れなくなります。
腕や手に無駄な力を入れ、自分の筋力を超えた速さでスイングしようとすると、フィニッシュでバランスを崩します。
いわゆる「マン振り」ができるのは、体幹がしっかりしていて、スイングスピードをコントロールできるプロだけでしょう。
これを逆説的に言えば「フィニッシュがとれるスイングなら力んでいない」ことになります。
要は、フィニッシュに意識を集中させれば力まなくなるのです。
特にトップからダウンスイングへの切り替えしで力まなくなるため、正しい軌道でヘッドを下ろしてこれるようになります。
できれば、フィニッシュで1秒程度静止するようにしてみましょう。
これは下半身が適度に力んでいないとできません。
土台がユルユルだと止まれなくなります。
正しいアドレスからリズムよくバックスイングに入り、力まずに切り返す。
そして、バランスよくフィニッシュできるようスイング全体を意識すれば、力みは軽減できるのです。



